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備忘録: カメパオ ver.1.0 Summer 1996
1) 震災に特定して考えていくのか、あるいはより一般的な子供の居所として考えていくのか?
これは震災の予行演習なのか、子供の精神的なケアーについて広く探っていくのか?こうした全体的な方向性の不安定さは、カメパオプロジェクトのみならず、「緊急の居所」-COSY-全体にも同様に常に付きまとう課題であった。このことについては参加者各々に様々な意見があり、思いがあった。開催時期が1996年8月というタイミングであったこともそのことに影響していたのではないだろうか。
カメパオver.1.0に関していえば、設計段階において「震災」が意識され、プランニング上直面した様々な選択肢の判断材料として神戸の震災の記憶から多くのことが参照された。また渋垂氏の震災後の神戸での行動を通じての実感や彼の絵画教室で子供達に接してきた経験、感覚をもとに具体的な要素が想定されていった。(もしそうでなかったとすれば、カメパオはver.1.0とは異なる別の形のカメパオとして登場した可能性もあるし、カメパオでなかったかもしれない。)
2) カメパオは、どのくらいの期間使用されるのか?
神戸の例をもとに推測すれば、カメパオは、永久設置されるべきものではない。こうしたシェルターの存在の有効性は震災1ヶ月後から始まって長くとも数ヵ月間(1-2ヶ月間)であるべきだ。これは、校庭が緊急避難所として利用される期間にあたる。この間、校庭での子供の緊急の居場所を確保するために、カメパオは「時限的」に存在するべきである。それ以上の長期間にわたって存在することは逆効果であろう。子供達は新たな生活をはじめなければならない。カメパオを必要としない生活。
3) ver.1.0として試作されたカメパオは具体的に亀をイメージできる形をしている。
具体的な亀のイメージは必要なのか?神戸での例によれば壊滅的な被害を受けた地域では、震災直後「形」を認識できるものはほとんどなくなる。このことの及ぼす精神的な影響は少なくないといえる。したがって「形」(特に親しみやすい具体的なイメージ)を子供達に提供することは安心感を提供することでもあると考えた。こうした状況下で、具体的な「何か」であることは想像以上に重要なことであり確実に機能するのではないか。ではなぜ亀なのか?これは偶然といってもよい。モンゴルのゲル(包=pao)集落のもつ機能と親しみやすい動物のイメージが「亀」として一致した。そして「カメパオ」という名前。事実、1996年8月の時点でくるみ幼稚園児達のあいだには、この言葉は既にかなり浸透していた。
4) 正方形のラワン合板をボルトで組み上げていく方法(頭部、甲羅部)と分割可能な鉄パイプ製のパーツを組み立てる方法(足部)を併用することになった。
各々のパオは1時間程で組み上がる。従って全体を組み上げるには合計すると約半日を要する。「みんなでやる」のに類することであろうから、組み立てに必要とする人員については心配無いであろうが、手順に関しての指導的な数名を要する。
我々のグループの中に技術的な専門家がいなかったこともあり、最小限で効果的な構造、安価な材料、組み立て解体が容易であること、収納時にコンパクトであること、可搬性等どれも満足に出来たとは言い難い。カメパオの性格上重要と思われる、各部を繋ぐ要素(連結部)に関してはほとんど考えることが出来なかった。また、今回は夏を想定したバージョンであり、そのことで切り抜けられた構造的な課題も多々ある。特に全体的な問題としての断熱性や雨対策、風対策、とりわけ甲羅部の強度については問題を残した。冬を想定したバージョン等の試作を重ねデータを作っていく必要あり。
5) 子供達は、大人達は、そして設計したカメパオプロジェクトチームは、カメパオver.1.0を使いこなせたか?
残念ながら答えはNOであろう。「緊急の居所」-COSY-におけるver.1.0の公開は、構造的な改良のための試用であると同時に(あるいはそれ以上に)、カメパオの目的や使用法を今後どう方向付けていくかを含めたデータ収集のための試用でもあったが、カメパオの存在自体に関しても簡単に結論は出せなかったと言うのが実感である。数多くの試用の機会、一人でも多くの試用者の参加の必要を感じた。幼稚園内というロケーションでの公開であり先生達の協力も多く得られたが、試用の感想等を充分に聞くことが出来なかったことも残念だった。
Last Updated: 2004.02.27
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